制作(復刻)した WE12A

Western Electric-12A

三〇路も入ったばかり、何でもトライしょうと張り切っていた頃です。
無いのはお金だけでしたが元気だけはありました。
1980年に製作しましたが質問や、問い合わせを今でもいただきます。
小生も年を取り、だんだん記憶が薄れます。
お答え出来ない事があるやもしれません。
今残っている写真を基に解説いたします。
念入りに仕上げた作品はとても愛着があり一生使えます。
量産品とは異なり時代と共に風格が出てきます。
数多く製作するより、時間を掛けて気長に、よいものを….

オリジナルの WE12A


写真が不明瞭ですがオリジナルの WE12Aホーンです。
お店の展示品などでなく、個人のお宅。
低域は4151A後面開放、高域は597Aを使用。
アンプは#86 300Bpp、プリとして使用しているウエスタンの放送局用調整卓は圧巻でした。
偶然お会いでき、そして懇意にしていただき、迷惑と思いながらも、月に1回は通いました。
インターネットはもちろんパソコンやデジカメも無い時代で、写真を撮る必要も無かったので、製作に必要な部分は写しましたが、装置の写真はありません。

池田先生の音の夕映で紹介され有名になったwestern 15Aの特大ホーン、この時代より以前に作られた12Aはまだベニヤが無かった時代でしょうか、25mmの単板で作られています。

初めて12Aに会った時驚嘆しました。
オートグラフのようにゆったりとして、繊細で聞きやすい。
軽い振動板はグランドピアノをごく自然に再生する。
ウエスタンは懐古趣味ではなかったのです。
(当時の職業は大ホール音響担当であり、毎日生音に接しておりました。)

12Aは大きく、重く、支える金具も厚さ10mmの鉄製です。
現代のような機械も無く、手で仕上げてあり、雑っとしてごついです。
素人が挑戦するには最高の素材です。
後に雑誌に15Aホーンの製作記事が出ました。
興味深く拝見しましたが、私にはベニヤを美しく仕上げるスキルはありません。
ウェスタン装置は素晴らしいが、今では入手できない別世界の物。

結局 悩んだ末、オーナーの助言で、WE-555Wだけは購入する。
ホーンはその12Aを復刻し、他はAltecを使用しオリジナル(自分独自)を目指すと決めました。

採寸と型紙

オリジナル12Aに型紙(ロールのトレシングペーパー)を当て採寸します。
金具など詳細をコピーするのに述べ5日ぐらい掛かりました。
少々気が引けましたが、快く対応していただき感謝感激です。

制作型紙

採寸した型紙を厚紙に貼り付け補強します。
丁寧にカットし定規にします。

ホーンの型1

型紙よりホーンのカーブの型を作ります。
開口部、喉部、各々内型、外型4個必要です。
材料は横12mm 面3mmベニヤ、写真は喉部内型。
ごらんのとうり物置の小屋での製作です。
手持ち道具は丸ノコ、電気カンナ、ドリル、ジグソー、ディスクサンダー、平サンダー、曲尺、ポンチ、この程度の木工工具、他に溶接機、切断機などです。

ホーンの型2

写真は喉部外型、型に接着材が付着しないようにポリシートを貼り付け、
その上にカーブに合わせて根気よく削り、積層して行きます。
ひび割れが生じないように1本ずつ木ねじで楔を打ち、強固に連結します
このようにすれば踏みつけても割れません。
最終板厚は1インチ、25mmです。

積層した各パーツ

積層した各パーツ

右手前は開口部上部板
左奥は開口部下部板
手前下(右、左)は養成中のペアになる物、ベニアを曲げた物と異なり、型を外しても戻らない。
子供が乗っても重いので動かない。喉部の積層寸法を最終チェックし仮止めする。
正確に採寸されているので先端を合わせればほとんど狂いは無い、微調は手製の金具。
横板を一枚一枚張り付ける、根気また根気。
奥に見える円はペアの喉部板完成品、ベニヤではこう上手く曲がらない。
でも、とにかく大きく重いです。

ホーン奥

最終工程
一旦分解し余計な部分をカットして最終仕上げに入る。
板厚みを確認、すべてオリジナルに忠実にする。接着剤はエポキシ樹脂。

最終組み立て

組み立て最終確認

これから塗装、組み立てたり、分解したり、その都度親父や、嫌がる家内を引っ張り出しました。

塗装

塗装
艶消剤を適量入れる
吹きつけ塗装 2

下地処理後オリジナルどうり、ニトロセルロースラッカー黒色 1/2艶消しになりました。
友人にエアーガンを拝借。

スロート

スロートの製作
当初は鋼板で製作 (後に鋳造品に取り替える)

試聴

試聴

82年お正月の試聴風景
まだ仮設置です。
12Aは300hzでローカット
Hiはオーナーからお借りした Altec 3000H×2(5年も借りました)
Low はコーラルのフルレンジ 20cm
ボーカルが素晴らしいのですが、ピアノやオーケストラは力不足でした。

western electric 555w

横より見る。ドライバーは Western 555W
下のアンプはラックス SQ606 低音用
後方は12A用 WE-300Bシングル トランス結合アンプ
和室8畳を占領しました。

western 555W お別れ

2010年暮れ、30年も自作12Aと伴にしたwestern555wと別れました。断腸の思いでした。

アルミエッジワイズ巻きボイスコイル、真珠のような光沢のダイヤフラム。
12Aは200-5000Hzで使用しました。

このシステムの設置場所の家屋を老廃で解体しなければならなくなり、移動先は胡蝶蘭の栽培アンテナショップ、毎日BGMとして贅沢な事を考えたわけです。
胡蝶蘭は心地よい音楽が流れる環境ではとても良い花を咲かす事が出来ます。

朝9時から夜の11時まで鳴りっ放し、振動板の予備も手に入らないし、
オープンスペースで盗難の心配もあり、555wを使用する事は出来ません。
保管しても良いのですがメンテナスや、今後の事を考えると、愛好者に譲ったほうがよいのでは・・・・。
12Aのドライブは代役を捜すことにして Y! オークションに出品いたしました。

写真はその時の物です。

Western Electric 555w

極上品です

Western Electric 555w

遠く、東北の愛好者に引き取られてゆきました。2度と手に入らない逸品でした。
(2012年5月記、2017年改訂、転記)