幻のタンノイ コーネッタ

75年頃ステレオサウンド誌に「幻のタンノイ コーネッタ」の記事が発表されました。
ⅢLZの空想上のエンクロージャーでオートグラフのような5角形をしておりました。
この記事内容に共感、ⅢLZも所有していたので、自分オリジナルのコーネッタを設計制作しました。
(製作記録写真なし)

ⅢLZ時代の初期の写真
ⅢLZ時代

構想

製作記事はオートグラフのような簡易ショートホーン、変形5角形で正面バスレフダクトで簡素な設計。

メインはⅢLZの25cmだが、将来30cmを取り付けられるようにする。
フロントショートホーンを装備するが、取り外し可能、平バッフルに取り替えで38cm取り付け可能とする。

豊かに広がる低音を求めてサイドにバスレフポートを配置するが、オンケンタイプダクト、パイプダクト、スリット何れにも変更できること。

一時コーナーヨークを所有
タンノイ コーナーヨーク
していたことがあり、レイアウトに散々苦労しました。
教訓から、邪魔なお尻をスパッと切り取り、変形6角形(下写真)にする。

コーネッタ上

お尻、ホーン部の減少分を加え、設計した結果850x1200と大型に、奥行きは400と短く邪魔者扱いされない、これは重要な課題でした。
コーネッタ
奥行きが深いⅢLZは後蓋に当たり蓋することができない、その部分を凸にした。

タンノイからアルテック

コーネッタはCD、FM、テレビ用です。
明快で自然な会話と音楽の再生が求められます。これが意外と難しい。

5年程使いましたが、躍動感に不満を感じ、小細工の出来ないⅢLZを諦めてAltec 414-16に変更し、上に811B+802Dを乗せました。
切れの良いサウンドにほぼ満足していました。

箱製作の不思議

スピーカーボックス製作記事は正面、背面、側面の板を上下から押さえ込む形がほとんどです。
これは家具、調度品からの由来で豪華な天板を使用し装飾が目的。
なぜか自作品でも踏襲されています。
道具としての箱は、制作上の不合理、強度不足で誰もこのような(上記)箱は作らないでしょう。
特にベニヤでは積層部が露出、みっともない。

平台
平台
樽のように天板、底板を側板が取り囲むのが普通で、最も強度があり、使い勝手が良いのです。
箱以外で、ステージで使われる箱馬や平台等も同じです。
WE(ウエスタンエレクトリック)の超大型ホーン12Aなども、この形で作られています。
この平台は使い古しで廃却されるものを、自家用に10枚運んだもの。

以上の事で製作記事は天板があるので変更、12Aに習って柾目の米松板(元材 25×50mmを集成)で製作しました。
材料は製材所で10年以上売れ残った2寸角を購入、良い部分を削り出す。
べニアと違い本物の板は年月を経ると風格(時代)が出てきます。
割れ、隙間が出ることもありますが、本物の証しです、それをアクセントとして生かして修理すれば良いのです。

サイドは丸孔がたくさんありますが、タンノイ風に縦桟を配したサランネットをはめ込む予定だったが、このままでもなんとか見られるので進んでいない。

地デジの時代

BSアナログの音は良く、地デジも期待していましたが音には少々がっかりしました。

タンノイ コーネッタ

時が経ち、静かな音楽を好むようになると、静寂さが損なわれているようで気になり調べる。
ウーハーの振動がホーン伝搬しているようだ。
セメダイン369(製造中止)で十分デッドニングしているのでこれ以上は無理である。
ショートホーンを取り外し、低振動の平バッフルを制作する、結果が悪ければ元に戻せば良いだけ。

構想と製作

低振動の平バッフル

バッフルはウーハーの振動を押さえ込むのではなく吸収するようにします。
基板は18mmの集成材を使用、集成材は厚みが一様でなくうねりがあるので注意が必要。
見えないところですが、こだわりのためベニヤは使いません。

集成箇所が剥離しないように適当に補強を入れます。
ユニット下の補強分は、ユニット取り付け、ローテーションに便利、そこに乗っけて位置決め、片手で楽々作業できます。
515Bの箱も同様に受けがあります。

ユニット側に制震材セメダインHC205を1㎜塗布、集成材の平面を補正し、厚手のポリエステル不織布を張り付ける。
(ユニットとバッフルを絶縁するため)
箱側にはHC205を2mmの厚さに塗布、その上に6mmの防音材を張り付けた。
(制震、それと箱本体とバッフルを絶縁するため)
箱には20本の木ねじで固定していますが、緩く締め付けます。
手で叩いた音の響きが「コン」が「コッ」に。

サランネットを付けた状態、見た目は何も変化なし。
しかし中はショートホーン撤去によるメカニカルな美しさは無くなり、平凡に。
音はとても静かになりました。

414は中音が充実しているので、ショートホーンは必要ないようだ。
大音量では迫力が落ちたよう、共振は爆音に有利に働き、聴き手によっては力不足と感じるかも

ウーハーが静かになると811Bホーンの鳴きが気になりました。
以前から811Bの後継を探していましたが適当なものが見当たらない。
H808の後期のものなら良さそうだが、物が出ない、ebayで一度見かけたが$4000を超えていた。
H1005より数が少ないようで全く手が出ない。
H1005は大きすぎる。

パイオニアMH-300マルチセルラーホーンに802Dを移植して試聴

パイオニア MH-300マルチセルラーホーン

壁の丸い板は地震対策(転倒防止)

811Bを撤去して802Dを移植して試聴する。(1500hzクロス)
ステーはステンレスで製作、簡単な構造、差し込みネジで高さ調節。

短いスロートの効果?指向性も品書きどおり広角、ホーン隅部はレベルが落ちますが
90°位は完璧で、部屋に横置き設置でも、聞く位置を気にしなくてもよい。

「マルチセルラーホーンはセルの干渉で高域が落ちる」との記事も。
どうして干渉するのか浅学の私にはわかりません。
また「音がソフトになる」とも聞きました。
もしかするとセルの入り口で、セル仕切り板の厚みによる反射が影響しているかもしれません。

1500クロスだから?
高域も気が付くほど落ちないし、鮮度も良い、他のマルチセルと比較試聴したこともないので解らない。
811Bよりは明らかに聞きやすく、明瞭である。

パイオニアMH-300マルチセルラーホーン

少し低音不足

HFホーンをパイオニア Pioneer MH-300砂入りに変えた結果、落ち着いた綺麗な音色に
2wayではほぼ限界と思われるまでになりました。
ただA-5程ではないが 少し低音不足でソースによってはTCを必要とします。

低音をブーストすると414が無理するようでボーカルが不自然になります。
15インチで聞くような音質傾向になります。
自然な会話、それは重要なこだわりです。

それならSWと。
友人の FOSTEX CW200Aを拝借して仮置き。
結果は音色が合わずバラバラの印象で即却下。

夢を託して ALTEC 405A

ALTEC 405A

大パワーはいらない。
極小音量でバランス、解像力が崩れないこと
ニュース番組でも自然であること。

ALTEC 405Aはボーカル再生は世界一と評されています。
私のコーネッタはバッフルが簡単に交換できるので、大好きな405Aを主役に抜擢してみました。
ボーカル部は妥協できません。
ALTECと言えば2wayが常識、私もそうして来ましたがやはり静かに聞く環境では限界があるようです。

今回はフルレンジに+ウーハー+ツィターで単に3分割したのではありません。
あくまで主役は405A、414と802は補佐役にします。

バッフルは国産針葉樹

イタヤカエデなど高級合板は綺麗だが所詮ベニヤ、凝るのであれば自分で気に入った材料で集成する。
響きが良ければ、安価な材料が良いと思ってます。

ホームセンターで構造用国産針葉樹のベニヤが目に入った、試作なのでとりあえずこれで。
木目が綺麗でたたくと程よい響き、2枚目をたたくとイマイチの響き。
良く見ると歪があり、節の空洞が多い。

店員さんに了解を得て、30枚近くひっくり返して2枚を選んだ 3×6”1枚¥1080円 恐縮して購入。

2枚を裏面どうし合わせて24㎜として重ねて穴を空ける。
405Aは24㎜では厚すぎるので半分は3cm大きく穴をあけた。
今まで穴はジグソーで加工、丁寧に修正してきた。
面倒なので今回Y’オクで中古のトリマ(¥4000)を購入して加工、一発でOK。
接着剤は手持ちのボンドE-205、木に吸収されるので2度塗りをする。
木ネジ30本ほどで強固に接着、更に木口、表、裏面共にE-205を吸収させる。

同じベニヤの裏面どうし接着すると歪が相殺され、曲りが生じない。

ユニットの取り付け

ユニットの取り付

べニヤは微妙に平面に歪があり、修正している、止めネジは軽く締めるだけでよい。

配線材は使い古しの2sqVCT(細い方は300v太い方は600v共に2sq)私は水素脆化のないOFCを好むが、高価なので機能的に必要なアンプに使うだけです。

この414-16と802Dは同じシステムに入っていたもの。
ユニットの色が異なるが、ラベルは同じグリーンのデザインです。
ALTECが一番輝いていた頃の製品と思われます。
405Aも同年代、旧ロゴ405Aは茶色のダンプ材がドーム周辺に塗られている、見た目はあまり綺麗でないが音は良い。

ALTEC 405A

405Aの開口部は梳毛フェルトをリング状にカット(バッフル板穴あけより難しい)して埋め込んだ。

ネットワーク

ネットワーク

改造前のオリジナルはN1505で1.5kクロス、L側12db、H側18db/oct。
コイルやコンデンサーの方向は統一されていない。
あまり細かいことは気にしないようだ。

低域のクロスは100、150、200、250で試聴、200hzが無難。
高域は1.5k、2k、2.5k、3k、4.2kで試聴、ベストは3k、手持ち部品の関係で2.75kに決定。
MH-300は短いスロートに変更しているので、3kでも問題なく拡散している。
405Aはローカット無し、その他6db/oct。

コンデンサーは 安価なDayton+スチコン(長年保管した逸品、富士通)、低域用コイルは自作品でカットコアー銅箔、高域用はFOSTEX LM。
他のオリジナルパーツはアッテネーター以外全て撤去。
オリジナルのターミナルも貧弱で2sqが取りつかないので大形に取り替えた。

雄大な音

雄大な音、コーネッタ

元々箱の構造からスケールの大きい音ですが、低域の厚みが増し更に雄大に。

鈍重な重低音とは異なり、12Aシステムに似て軽く心地良い。
12~15インチの大口径の中低音は凄い迫力、でも自然でない。

爆音再生は必要なし、静かな環境ではソースを選ばない、MH-300の効果?ALTECに似合わず 室内楽も大変上品、大編成も難なく再現します。
前期ウエスタンやオールホーンのような音質傾向です。

ボーカルは絶品、ちあきなおみが元気に帰ってきた!
ニュース番組では、大型スピーカーは止って、テレビ付属のスピーカーが鳴っているようです。

405単独、414と802の2wayに切り替えられるようにしたが、3wayの良さが際立ち、替えることも無く、固定した。
ほぼ課題が解消されたようで満足、SPに関しては、この製作記事が最終になりそうです。

専用の遮音された部屋があるでもなく、家族に迷惑をかけることも無く、飄々として時をすごしてます。

舞台の仕事、生音から離れてはや20年近くになりますが、持ち込みのPAは別として、音場をそれらしく再現できるのはALTECが良いと思っています。
頑丈で壊れないのが一番かな。
レンジが広いJBLや国産も素晴らしいのですが、なぜか壊れるのが早いようで安心して付き合う気がしないのです。
その点TANNOY(RED)も良かったがネットワークが弱点で、缶ずめを壊してまで修理する勇気がなかった(ネットワーク部品を変えるとTANNOYと言えないそうだ?)。
またコネクタも欠陥部品、3LZはやむなくハンダ付けした。

’82年頃、にこの414と802を購入したのですが、当時12インチは人気が無く、セット(802、811B、414ペア)上物で5万円程でMJ交換欄で入手。(片方の414に少しボイスタッチあり格安、ダンパー修正しました)
3LZは同時期6万で購入しました。

10年前は中古市場にごろごろ有った405Aも最近はすっかり消えてしまいました。
安かったので粗雑に扱われ消耗されたのでしょう。
旧タイプ405Aのストックはまだ少しあるので大切に保管したい。

綺麗な化粧板も時が経てば剥がれる、角はベニヤの接合点、損傷したら無残、修正出来ない。
私の箱のコーナーは削り出しの1本物、重量は嵩むが損傷しても、おたやん 目立たず、アラが出ない。

Y’オクでも使用感の有るベニヤ製品や消耗品は安い、骨董実用品は使い込んだ方が高い。

素朴な木工品は使い込むほどに風格がでます。

私が製作したのは、12Aと515の箱とコーネッタの3点です、目一杯手間をかけて、メーカーの量産品より格上の物を作ることが自作の醍醐味と思っています。
12Aは別として、バッフル、ダクトに汎用性を持たせて衣替え可能として、ユニットは変わっても対応できるようにしました。
飽きることも無く一生使えます。

パイオニア CS-A55

CS放送(SPACE DiVA)専用で使用。
大掃除で一時取り外しました。
気に入って使い続けている物にパイオニア製品が多い。
組格子シリーズの最廉価版で20cmと6cmのコーン型2ウエイ。
しっかりした組格子は無傷、小型ながら96dbの高能率、クロスエッジで長寿命、フルレンジの如く使いやすく癖もない、今昔を問わずこのような製品は少なく、貴重と思います。
(2012年10月記、2017年改訂、転記)